インドの人口増はプラスかマイナスか(2023年4月1日)
今、インドに世界の注目が集まっている。地政学的にはグローバルサウスの盟主として、中露と欧米の結節点的な役割で存在感を増しているし、経済の面でも安定的な人口増加を背景に、今後も継続的な経済成長が期待されている。
2022年末にはとうとうインドが中国を抜いて世界最多の人口を擁する国家となった。カウント方法に違いがあるので正確性はわからないが、インドは国連推計で14億2203万人、中国は外国人を除いたベースで14億1175万人。その差は1,028万人なので14億の人口から考えれば誤差の範囲だが、その誤差程度の人口しかない国が欧州には数多ある。
インドの人口増加はもう暫く継続するようだ。国連の推計ではインドは2030年代の間に15億人台に到達し、ピークとなる2064年頃には17億人に達するとされている。25歳以下の人口が4割を超えるなど若年人口が多いインドでは、中国のような急進的な人口抑制策を採らない限りは人口増加のペースが鈍化することはなさそうだ。
ここで本題になるが、この人口増は本当にインドにとってプラスなのかマイナスなのか。少なくとも今までの常識で明らかにプラスである。インドは今も「人口ボーナス期」の真っただ中にあり、人口ボーナス期は2040年代まで継続すると言われている。ただ、インドは増加する人口に見合う雇用を創出していけるのだろうか。
自分もインドに2年間滞在していたが、高付加価値の製品を製造することは難しい印象を持っている。最近はアップル社がiPhoneの製造を本格化させたりしているが、展開はスローな印象だ。現在、世界のスマートフォンの生産は中国が首位で70%、インドは16%程度に過ぎない。GDPに占める製造業の割合はインドは14%と低い。対して中国は40%前後に達していることを考えると、製造業をどれだけ伸ばせるかどうかで、インドが中国のような成長を実現できるかが決まるのだろう。
更に言えば、今後のデジタル化、AI化の流れの中で、更に付加価値の高い就業機会を巡る国家間の競争が激化する中、未だ製造業を拡大させるステージにいるインドに将来の可能性が残されているのだろうか。デジタル化、AI化のポイントは物理的なタッチポイントが少ないため、雇用と報酬が集中してしまうことことだ。物理的にモノを製造している限りはインドの強みが活かされるが、今後更に経済の形が移行していく中で、インドは「低コストの生産拠点」として欧米日の下請け的な立場に甘んじる日々が継続してしまう可能性はないだろうか。
(参考にしたサイト等)
www.pewresearch.org