一歩下がって考えてみた-Black tee thinking

50代、海外在住です。日々気づいたことを書き溜めています。

デジタル給与の解禁は電子マネー業者のロビー活動の成果では?(2023年4月2日)

日本でデジタル給与が解禁される。日本経済新聞によれば、すでにPayPayは給与のデジタル払い事業に参入するために、厚生労働省への申請手続きを開始したようだ。すでに8社が検討しているとのことであり、更に競争が激化することが予想される。

 

記事では「海外でも当たり前」というトーンが透けて見えるが、本当にそうだろうか。給料のデジタル支払いは、銀行口座を保有しない人の割合が多い発展途上国で有効な対応だと理解している。日本で銀行口座を保有しない人の割合は2%と世界最低水準。米国は7%で先進国では比較的高いこともあり、ペイロールカードが普及している構図か。

 

銀行口座がある限りは、最初は銀行口座に全額振り込むのが自然なので、デジタル給与解禁の意義がわからない。雇用者側は振込手数料削減効果があるとしているが、デジタル給与払いには上限額が設定されることから、資金を銀行口座振り込みとデジタル給与払いの分けることになるため、むしろコストアップ要因ではないか。必ず決済アプリを利用する従業員にとっては若干のメリットにはなるが、政府を動かして仕組み作りを促すにはあまりに弱い。

 

今回の法改正で新たに拡大する可能性があるのは記事中にも少しだけ触れられている「給与の前払いサービス」ではないか。給与後払いである以上、従業員に常に雇用者に対する「未収債権」があり、それは日毎に増加している。その未収債権を必要なタイミングで金利分を割り引いて前渡し出来れば、新たな事業機会が生まれるうえに、支出割合が多い一定の層のニーズもあるのではないか。

 

但し、この程度では政府が仕組みづくりに乗り出す程のインパクトではない。個人的な見立てでは「給与の前払いサービス」が普及する可能性は低いとみているし、それ以外のメリットも説得力に欠ける。日本が遅れている「キャッシュレス普及」を促す等の理由も添えられた可能性はあるが、資金の入り方を便利にしたら、キャッシュレスがどんどん普及するとは到底考えにくい。

 

羽振りの良さそうな電子マネー事業者と政府、厚生労働省が必要以上に親密でないことを祈るばかりである。

 

(参考にしたサイト)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB309UY0Q3A330C2000000/

https://in-prepaid.com/alternative-ways-to-pay-employees-who-dont-have-bank-accounts/#:~:text=There's%20a%20Better%20Way%3A%20The,withdraw%20cash%20at%20an%20ATM.

https://www.gfmag.com/global-data/economic-data/worlds-most-unbanked-countries