テスラが今年3回目の値下げ~電気自動車は値下げが簡単なのか? (2023年4月7日)
テスラ社が今年3回目となる値下げを発表した。モデルSとモデルXを何れも5千ドル値下げして、それぞれ8万4990ドルと9万4990ドルになる。値下げによって「利益率より販売台数を追う」ことにしたようだ。2023年1月には比較的廉価なモデル3とモデルYを約10%値下げしていて、3月には高級車種であるモデルSとモデルXを4~9%値下げしていたが、今回は3月に値下げした車種を更に引き下げる格好だ。
値下げの効果もあってテスラの販売は好調だ。2023年第1四半期の販売台数は前年同期比で36%増。この数字は極めて好調に見えるが、2022年7-9月期が42%増加だったものが10-12月期は31%増に落ち込んだため、てこ入れした格好だ。
不思議なのは、何故電気自動車はこれほど機動的に値下げが出来るのだろうか?要因としては以下の2つに集約される。
一番大きいのは市場が成長していて競争も激しいことだろう。上述のとおりテスラだけでも前年同期比で販売は30%から40%伸びている。世界ベースでみれば、2022年のBEV(バッテリー式EV)年間販売台数は約780万台で前年対比68%の増加だ。自動車全体の新車販売台数が1%減少して8060万台となったこととは好対照である。そんな成長市場でBEVシェア2位のBYDも値下げを攻勢をかけているため、値下げを迫られている構図というのが正しいところか。
2つ目の理由としては部品構成の違いだろう。よく言われているがEVは部品点数がエンジン車と比較して1/10と少ないうえ、車両価格に占めるバッテリー関連のコストが約2割とも言われている。しかもバッテリーの値段は急速に下がってきている。1キロワット時(kWh)で2022年は151ドルと少しコストアップとなったが、2013年には732ドル、2017年には242ドルだったことを考えれば、劇的なコストダウンと言える。
確かに値下げしやすい構図にはなっているが、既存ユーザーにとって値下げは大きなマイナスだ。自動車は数百万円単位の資産であり、壊れるまで乗り続ける人以外は「リセールバリュー」は大きな関心事となる。ガソリン車が値下げを殆ど行っていなかったのも、リセールバリュー維持を重視したことも大きいと考えられる。EVの普及が加速することで、充電ステーションの整備も進むなどプラスの効果もあるので一概には言えないが、あまり機動的に値段を上下させると既存ユーザーの支持を損なう可能性がある点は注意したほうが良さそうだ。
(参考にしたサイト)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN311QG0R30C23A3000000/
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN06CG60W3A300C2000000/
https://toyokeizai.net/articles/-/650084