一歩下がって考えてみた-Black tee thinking

50代、海外在住です。日々気づいたことを書き溜めています。

ロシアの「電子招集令状」法成立、追加の限定動員はあるか(2023年4月14日)

ロシアの「電子招集令状」の今後の展開について考えてみた。

今回の「電子招集令状」法は徴兵忌避対策だ。従来は紙の令状の手渡しが原則であり、軍の事務所も対象者の正確な住所情報を持っていないため、本人はモスクワに居るのに令状を持っ軍の担当者は地方の実家に令状を持っていたりという状況が頻発していた。今後はゴススルギと呼ばれる政府のサイトにある個人別のアカウントに令状が届くので、効率よく徴兵手続きが出来るということだ。出国停止、免許の効力停止など強制措置も可能になった。

では今後はどのような展開になるのか。考えらえるシナリオは二つだ。

一つは追加の限定動員令だ。前回は2022年9月21日に限定動員令が署名され、10月29日までに30万人が動員されたとしている。しかし、その後も死傷者が増えており、報道では累計で20万人規模に達しているとされていることから、追加の限定動員令の可能性が噂されている。但し、前回の同じやり方で限定動員を行うと、若者の国外脱出等で社会が混乱するので、まずは電子招集令状を可能にすることで予め逃げ道を塞いでおき、暫くしてから追加の限定動員令を始める可能性がありそうだ。

若しくは、当面は追加の動員令は出さない代わりに、今回の電子招集の仕組みを使って、過去の動員対象となった対象者で国外に退避している人物を確実に招集していく可能性もある。昨年10月にショイグ国防相は目標としていた30万人に動員が完了したとしているが、これは実際に動員出来た数字なのか、動員対象としてリストアップした数字なのか今一つ判然としない。ロシアから聞こえてくる話でも、動員が完了したと発表されてからも、招集令状に関する噂をちらほらきいたので、数万人規模で招集未済の対象者がいる可能性も否定出来ない。

今のロシア国内の雰囲気では追加の動員令は難しいので、実は後者ではないかと推察している。国外に逃げていたため招集を免れた人物を確実に招集するのであれば、社会からも大きな批判は受けにくいことも考えられる。どちらのケースでも戦争が短期間で収束する可能性は低く、その点は大変残念ではあるが。