ところで水素1キロはガソリンで何リットル? (2023年4月16日)
化石燃料から製造された水素に関する基準が決定したとの報道があった。水素1キログラムの製造で出るCO2が7キロを下回れば環境に配慮していると見なされるようだ。太陽光発電等で製造されるグリーン水素はCO2の排出がゼロだが、化石燃料から製造されるブルー水素も回収技術等を用いて製造過程で排出するCO2を7キロ以内に抑えれば「クリーンな水素」であるとの太鼓判を得た格好だ。
そこで疑問が湧いてくる。水素1キログラムとはどの程度のエネルギー量なのか。十分なエネルギー量がないと、CO2の7キログラム排出と釣り合わないからだ。
その前にまず、水素の製造過程でどの程度のCO2が排出されるのか。ネットで調べた限りでは、水素1キログラムの製造過程において、天然ガス由来で9~12キログラム、石油由来で20~25キログラムとされている。つまり、天然ガスは石油と比較して半分のCO2排出量で水素が製造可能ということになる。
次に水素1キログラムとはどの程度のエネルギー量なのか。これは結論から言えば、ガソリン10リッター程度のようだ。これは水素で走るトヨタのMirai Zからの計算だが、Mirai ZのWLTC燃費(水素1キログラムあたりの走行距離)は135kmになる。一方で、Mirai Zクラスのガソリン車であればリッター13km程度は走ると思うので、単純計算で10リッター分となる。
ガソリン10リッター分とは言え、二酸化炭素7キロの排出は多いようにも感じるが、この程度にしないとコスト的に合わなくなるので、やむを得ない措置だったのだろう。これ以上厳しくすると石油由来の水素製造が絶望的になるからだろうか。
なお、誤解している人がいるかも知れないが、水素はエネルギーというよりは電池のような、エネルギーの貯蔵・運搬手段だ。石油や天然ガスのような、エネルギーとしてそのまま使える水素は地球上にはない。なので、太陽光等の再生可能エネルギーを使わない限り、副産物として二酸化炭素は生成されてしまう構図だ。
それにしても、本当に水素エネルギーの活用は進むのだろうか。欧州の自分勝手なロジックに世界が振り回されている格好だが、2030年頃に振り返ったら「あ~、確かに一瞬盛り上がったねぇ」なんてことになるような気もするが。
(参考にしたサイト)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1118K0R10C23A4000000/