一歩下がって考えてみた-Black tee thinking

50代、海外在住です。日々気づいたことを書き溜めています。

東京からリモートで海外勤務 ~ 内外給与格差というパンドラの箱が開くか(2023年4月17日)

三菱電機が「海外に赴任せず国内からリモートで海外勤務出来る制度」を導入したらしい。報道以上のことはわからないが、ほぼそのままの内容なのだろう。現地の社員になるためには現地の労働VISAが必要になる国もあるし、時差もあるので国毎に様々な事情はあるが、コロナでリモート勤務が普及したために可能になった新しい勤務形態だ。

海外赴任せずに国際業務に従事したい社員にとっては理想的な制度だ。子女の教育や介護等の事情で海外赴任が出来ない社員は多い。しかし国内で出来る国際業務のポストは限られているため、結果的に発生していた人材需給のミスマッチが解消されることになる。日本から赴任する社員は本社との調整役が大きな役割期待であるケースも多く、その点でも国内勤務はアドバンテージになる。

但し、給与の扱いは国内給与に準じることになると思われるため、その点が課題になりそうだ。通常であれば、慣れ親しんだ日本の生活とは異なる環境で暮らす等の理由から、海外給与は高めに設定されている。海外生活を強いられる以上、納得的な理由であるが、過去に10年以上、4カ国で海外勤務をした自分の経験で言えば、海外勤務の給与は必要以上に待遇がよくなっている印象が強い。これは何故か。

これは海外勤務が可能なグローバル水準の社員に対する給与水準調整が含まれていると考えられる。大企業であっても、実感的に「海外で即戦力として働ける人材」は基幹職のうち3割程度ではないか。これら3割はそもそも評価が比較的高いので残る7割よりは多少は平均給与が高いが、海外勤務を行っている期間は本来よりも良い待遇とすることで人材の流出を防止しているのではないか。つまり、低めに設定されている日本での給与の水準補填の性格があると考えられる。

そうであれば国内勤務であってもグローバル水準の社員の給与水準を高く設定すれば済むハズだが、日本の人事制度がそれを難しくしている。どの企業でも職系や社内の職階・職級で給与を決定する仕組みを作っているので、高いランクを適用すれば済むのだが、年齢を基準にある程度の想定レンジがあり、それを逸脱することを嫌う傾向が多い。なので、海外に赴任するタイミングで色々な制度を通じて高い給与を支払うことにしているのだろう。

そもそも日本のいわゆるサラリーマンの給料は驚くほど低い。最近は東南アジアであっても、一定レベル以上の現地社員の待遇はかなり高く、日本からの駐在員がみじめな想いをすることが少なくない。欧米であれば猶更だ。このあたりの事情を抜本的に改善することも必要ではないか。

今回の三菱電機の新しい制度は、色々なパンドラの箱を開けるきっかけになることを期待している。