一歩下がって考えてみた-Black tee thinking

50代、海外在住です。日々気づいたことを書き溜めています。

スーダンからの邦人退避~海外赴任の在り方が変わる(2023年4月24日)

スーダン国内での軍事衝突に伴い、邦人退避に関する報道が増加している。スーダン国内の日本人は60人ほどであり、退避の為に派遣した自衛隊機がジブチに到着したほか、陸路での脱出も議論されているようだ。欧米等も自国民の退避を進めているが、フランスにより退避プロセスでは車列に攻撃があるなど、現地でも混乱が増している。

海外にいる日本人が危険な目に遭うリスクは最近高まっているように思える。中国におけるアステラス製薬社員の拘束に加えて、ロシア・ウクライナ情勢やミャンマーの政変で多くの日本人駐在員が一時的に国外退避するなど、以前にもまして危機管理がクローズアップされるようになった。台湾情勢に関するシミュレーションについても多くの企業が行っている。

コロナ禍を経験してリモート勤務が定着したため、リスクシナリオ発生時の自由度は大幅に向上した。以前であれば赴任国から避難・出国してしまえば業務は事実上ストップしていたが、今の環境であれば業務継続は可能だ。リスクが高まった時点で早めに手を打つことで、駐在社員を無用なリスクに晒すことを回避できる。(ただし、今回のスーダンのケースは比較的突発的だったこともあり、対応が間に合わなかったようだが。)

従来、リスクシナリオにおける企業の危機管理のポイントは「いかに脱出させるか」に重きを置かれていた。なので、途上国に赴任すると「最も近い主要国までの片道オープンチケット」が支給され、緊急時はそのチケットで国外に脱出することとされていた。また、陸路での脱出路も確認することが求められたりもした。但し前者については赴任国が本当に混乱すると結局は使えない可能性もあるので、実効性に疑問がついていたのは事実だが。

今後は治安や政情に不安がある国への駐在員赴任は極力絞り込むことが加速するのではないか。営業等、赴任しないとビジネスにならないケースなら兎も角、現地の業務運営や人事、内部管理等についてはリモートの枠組みを活用すれば対応できるケースが多い。その上で定期的に出張すれば対応が出来るのではないか。

三菱電機は海外に赴任せずに国外からリモート勤務を行う制度を導入したとの報道があった。それで100%海外赴任をなくせるわけではないが、今後の日系企業の国際業務における一つの解として広まっていく可能性が高そうだ。