一歩下がって考えてみた-Black tee thinking

50代、海外在住です。日々気づいたことを書き溜めています。

ウクライナの復興資金をどうやってファイナンスするのか(2023年5月21日)

G7は滞りなく終息し、ゼレンスキー大統領は狙い通り存在感を発揮することが出来た。まさに役者ばりの見事な立ち回りだ。レーガン大統領も大成功したように、政治家の重要な資質は演じることだと改めて思い知らされる。

まだ戦争が終結する見込みが立たない中で気が早いかも知れないが、今後はウクライナの復興支援に焦点があたってくると思われる。しかし、その費用は膨大は。2023年3月に世界銀行等が発表した推計ではウクライナの復興・復旧に4110億ドル、日本円で54兆円が必要とされている。この数字はウクライナ国内総生産の2.6倍に相当するようだ。

この数字でもまだ控えめとなっている可能性はある。ウクライナ政府側は復興費用をもっと多額に見込んでいる、昨年秋の時点で、ウクライナのデニス・シュハミリ首相は復興費用を7500憶ドルと見積もっていると発言している。彼らの立場からしたら、より多額の見積もりを出して損をすることはないので、金額がインフレしやすいのは致し方ないが。

では、これまでの支援額はどれくらいか?分かりやすい統計は見当たらないが、今年1月までの累計で米国で712億ユーロ、EUが355億ユーロ、英国が98億ユーロとなっている。なので、これら以外の国を入れると恐らくは1500億ユーロ規模、米ドルだと1650億米ドルくらいか。但し、これらの援助の大半は軍事援助だ。例えば米国では712億ユーロの大半は軍事援助になっている。復興支援等で必要は非軍事の財政支援は現時点では全体の金額の半分以下と推定される。

今後、G7各国は復興資金をウクライナに援助するだろうか。多少の支援は行うが、軍事援助ほどの勢いはないはずだ。軍事援助の良いところは自国に資金が還流することだから、特に米国、英国は積極的に取り組んでいる。一方で財政支援はそうならない。ウクライナにとっては大事な費用だが、G7各国の視点ではメリットに乏しいのだ。

なので、ロシア中銀資産に関心が集まるのもよくわかる。各国で凍結されたロシア政府が保有する外貨準備は3000憶ドルにのぼるので、仮にこれらが充当できればウクライナ復興関連のファイナンスはほぼ目処がたつことになる。

今後、ロシア中銀の凍結資産を流用できるような法整備が急速に進む可能性が高い。その場合、ロシアがどのように反発するのか心配だ。日系企業を含むG7諸国企業の資産接収を進めることにならないと良いが。