一歩下がって考えてみた-Black tee thinking

50代、海外在住です。日々気づいたことを書き溜めています。

居酒屋の将来について考えてみた(2023年5月1日)

コロナ禍が終了して外食産業の売り上げが回復している。2023年3月は前年同期比で19%のプラス、16か月連続で前年比プラスとなっている。特にアルコールをメインにしているパブ/居酒屋部門はプラス89%と高い伸びを示している。酒類の提供制限が無くなったうえに歓送迎会シーズンも重なったことが理由とされている。

ただし、パブ・居酒屋などの業態の将来は難しそうだ。コロナ禍が終了して人の動きは回復してきているが、在宅勤務の増加、飲みケーション文化の交代、家飲みの定着、健康志向の高まりなど、ネガティブ要因ばかりが連想される。

そもそも日本の「飲み屋」文化は欧米とは大きく異なる。アルコールを中心に据えながら、それに伴う食事もバランスよく提供しながら「宴会」の場を提供するスタイルの飲食店は、少なくとも欧米にはなさそうだ。食事メインのレストランで、食事に合わせて良質のアルコールを楽しむスタイルか、パブやバーのようにアルコールをメインに据えて、限定的にフードを提供するかの何れかだ。二兎を追う居酒屋形態のお店は見かけない。

そこから考えていくと、現在の居酒屋もレストラン化してフードに注力するか、提供するアルコールで差別化を図りながらパブ形態に移行するかの何れかになるのではないか。但し、何れの業態もすでに市場が確立しているので、新しい切り口がないと参入余地は乏しい。では何ができるのか。

一つは個食対応だろう。これは立ち飲み店と競合するので差別化が必要だが、清潔なテーブル席と、できれば間仕切りを設けて個人スペースを確保すれば一定の人気が出るのではないか。また、他の客との交流を前提とする席と、そうでない席を分けるのもよさそうだ。

二つ目はエンターテイメントの提供だ。一人で来店する場合、スマホや本、雑誌を見ながら飲食をするケースが多い。なので、漫画喫茶のように一定数の漫画や雑誌を置くことも検討できるのではないか。パソコンの設置はコストや保守メンテを考えると難しそうだが、漫画喫茶のフレーバーを足すことは差別化に繋がると思われる。

三つ目としてはアルコール類の差別化が考えられる。典型的なのはカクテル系だ。若しくは高級なウィスキーなども面白そうだ。氷で工夫してもよい。もう少しエッジを効かせれば来店の動機につながるのではないか。

四つ目としてデリバリー対応も検討できる。アルコール類は購入したものを消費できるにしても、おつまみは手の込んだものを食べたいニーズは確実に存在する。なので、アルコールに合うフードのデリバリーに注力することも一案ではなかろうか。

改めて感じるのはアルコールとフードの双方を重視する居酒屋業態の特殊性だ。今の時代のトレンドではもう少しエッジを効かせる必要があるのではないか。その結果、各店舗の小規模化は避けられそうにないが。